2015年06月16日

映画『あん』

 『萌の朱雀』『殯の森』の河瀬直美監督の初の商業映画(という言い方は語弊がありますが、あえて)であり、初の原作あり映画を、シネスイッチ銀座で。

 私の観たのは14:00の回でしたが、16:35の回の後には、監督と著名なカメラマンであるレスリー・キーさんのトーク・ショーもあるようでした。

 ちなみに、昨日は浅野忠信さん、一昨日は斎藤工さんと、3日連続の企画だったようです。作品に出演していない俳優さんとのトークショーって、珍しいような気がします。


Story
わけあって、どら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々をこなしていた千太郎(永瀬正敏)のもとに、ある日、徳江(樹木希林)という老婆がやってくる。求人の貼り紙を見て「ここで働きたい」という彼女の申し出を一度は断るが、彼女が置いていった手作りのあんの味と熱意に雇うことに。徳江が作るあんの味が評判となり、あっという間に店は大繁盛。失敗作のどら焼きをもらいにくる女子中学生・ワカナもだんだんと徳江に馴染んでいく。しかし、かつて徳江がハンセン病患者だったという噂が広まり、客が一気に離れていった。徳江は店を去り、千太郎も失意の日々を過ごす。やがて届いた徳江からの手紙を頼りに、ワカナと共に千太郎は徳江が暮らす療養所へ・・・。
(Movie Walkerより改変)


 ハンセン病を扱っているものの、社会派映画ではないこともあって、ストーリー的にはそれほどの深みはないように思いました。

 ですが、樹木希林さんのどこか飄々とした、独特の存在感。それでいて、あざとくない。初共演という市原悦子さんと並べば、最強です(笑)。

 「何かになれなくても、私達には生きる意味がある」等セリフよりも、桜、緑の木々、夕景・・・等々、折に触れて挟まれる何気ないカットにこそ、(偉そうな言い方になりますが)河瀬監督の作家性を感じて、感心しました。

 小豆から丁寧に時間をかけてあんを作る。1枚1枚、鉄板(銅板?)で丁寧に皮を焼いていく。そんな映像も美しく、味があります。

 どら焼きが食べたくなります。

〔満足度〕★★★☆☆


『あん』公式サイト
http://an-movie.com/
posted by ふくちゃん at 18:43| 兵庫 ☁| Comment(0) | TrackBack(7) | Cinema Review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月05日

映画『涙するまで、生きる』

 今日もマイナー系の映画。

 新聞評で興味を持ちました。

 場所も前回に引き続き渋谷ですが、これまた初めてのシアター・イメージフォーラム。

 以前に私が鞄を買ったHERZ(ヘルツ)のすぐ近所にこんな洒落たミニシアターがあったとは・・・全く知りませんでした。

 ロビーが狭い(笑)!


Story
1954年、フランスからの独立運動が高まるアルジェリア。元フランス軍少佐で予備役将校でもある教師ダリュ(ヴィゴ・モーテンセン)は、人里離れた場所で現地の子ども達を教えるための学校を開きながら暮らしていた。ある日、彼のもとに殺人容疑をかけられたアラブ人のモハメド(レダ・カテブ)が連行されてくる。裁判にかけるため、山を越えた町にモハメドを送り届けるよう知り合いの憲兵に命じられたダリュは、面倒に関わることを避けるため、モハメドを逃がそうとする。だが、復讐のためモハメドの命を狙う者たちに学校を襲撃された後、モハメド本人の希望もあり、やむを得ず彼と共に町へと向かう。途中で独立運動の反乱軍とフランス軍の争いに巻き込まれたものの、辛くも危険を乗り越える。会話を重ね、互いの境遇を知るに連れ、二人の間には友情にも似た感情が芽生え始めるが・・・。
(Movie Walkerより改変)


 若干ですが、映画の内容に触れてしまいます。

 フランスの植民地アルジェリア。

 モハメドがいとこを殺したのには、それなりに正当な理由があります。

 ですが、アラブの掟によって被害者側の親族は、モハメドを殺そうとします。もし、モハメドが殺されると、今度はモハメドの弟が仇討に臨むことになってしまいます。

 モハメドは、この報復の連鎖を防ぎ、家族を守るために、フランス人の手で死刑にされることを望んでいます。

 ダリュは、そんなモハメド自身をも報復の連鎖から解き放そうとします。

 モハメドによる親族への殺人とアラブの掟。

 ダリュとモハメドの関係性。

 フランス人を殺すためにテロを行うアルジェリア反乱軍、彼らを掃討するフランス軍。

 ヨーロッパとアフリカの歴史の疎い身には分かりかねますが、いろんなモノが重ね合わされているように思います。

 尤も、そんな難しいことを考えずとも、ダリュの表情や言葉(ヴィゴ・モーテンセンさんがとにかく渋い!)や景色など、作品が醸し出す空気感だけで、充分に愉しめます。

 味わい深い・・・。

〔満足度〕★★★★☆


『涙するまで、生きる』公式サイト
http://www.farfrommen.com/
posted by ふくちゃん at 19:02| 兵庫 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | Cinema Review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月01日

映画『サンドラの週末』

 なかなか観たい!と思う映画が無い状態が続いています。

 以前にも何度か書いたと思いますが、最近はどうも映画に対する自分の採点が辛めになり、「面白い!」と素直に思える作品に出会いにくくなってきて、それが観る映画を厳選しようとする気持ちに繋がっているように思います。

 さて、今日は初めての渋谷Bunkamuraル・シネマで『サンドラの週末』。新宿では上映館がないもので・・・。

Story
体調不良のため休職していたサンドラ(マリオン・コティヤール)が職場に復帰しようとした矢先、会社側から職員へボーナス支給するために1人減らさざるを得ない、よって解雇すると告げられてしまう。16人の同僚による投票の結果、サンドラの雇用継続よりも自分たちのボーナス獲得を選ぶ者の方が多かったのだ。だが、サンドラも家族を養うためには夫の収入だけでは厳しく、復職は譲れない。同僚の1人が社長に掛けあってくれたおかげで、週明けの月曜日に再投票を行い、自分のボーナスよりサンドラの復職を選ぶ者が過半数に達したら、サンドラは仕事を続けられることになる。同僚たちを訪ね説得して回る、サンドラの長い週末が始まった。
(Movie Walkerより改変)


 この映画で最も直截に悪者として描かれているのは、16人+サンドラの直属の上司である「主任」だけ(実際に登場するのは、最後のシークエンスのみ)。

 主任の裏で糸を引いている社長は一見悪者には見えませんが、狡い。

 しかし、その2人以外は、みんな普通の、どちらかというと貧しい人たち。サンドラに対しては何も含むことはありませんが、彼女が辞めれば生活の大きな足しになる貴重なボーナスが手に入るのです。

 16人の同僚のうちボーナスを選んだ者にも事情があり、サンドラへの同情があり、葛藤があります。サンドラもそれを理解するがゆえに、彼女の復職より自己のボーナス獲得を求める同僚を責めることができません。

 再投票の結果、サンドラは職場復帰できるのか。

 味のある最後だったと思います。

 とはいえ、登場する同僚を減らし、彼等と主任の人となりをもっと描けば、さらに良かったのではないでしょうか。

〔満足度〕★★★☆☆


『サンドラの週末』公式サイト
http://www.bitters.co.jp/sandra/


 Bunkamuraル・シネマは綺麗なミニシアターでした。座席にドリンクフォルダーがあったり、コンセッションが充実したりしていると、なお良いですが。
posted by ふくちゃん at 21:44| 兵庫 | Comment(0) | TrackBack(0) | Cinema Review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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