現実を離れ、「物語」の世界に没入する・・・。これが読書の醍醐味であり、僕にとって欠かせぬストレス解消法です。
このカテゴリでは過去に読んだ本、最近読んだ本の中から、おすすめの作品をご紹介していきます。
小川洋子「博士の愛した数式」(新潮文庫)
第1回本屋大賞に輝いた話題作。文庫になったら必ず買おうと決めていました。僕は月に4〜5冊は小説を読むので、単行本だとお金もかかるし、置く場所もないし・・・。本当は単行本が好きなんですけど、がまん、がまん

天才的な才能を持ちながら、交通事故の後遺症により、その時点で記憶の蓄積が止まり、新しい記憶は80分しか持たない、阪神タイガースファンの老数学博士(彼の中では阪神のエースは今も江夏豊のまま)と、そこにやってきたシングルマザーの家政婦「私」、その息子「ルート」(博士のつけたニックネーム)の交流を描いた作品です。
彼らのコミュニケーションは数学を通じて行われます。
「君の誕生日は2月20日。220、実にチャーミングな数字だ。そしてこれを見てほしい。僕が大学時代に、超越数論に関する論文で学長賞を獲った時にもらった賞品なんだが・・・・・・」
その賞品は腕時計で、文字盤の裏側に“学長賞284”と刻印され、博士は220という数字と284という数字が「友愛数」であることを語ります。
220:1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110=284
220=142+71+4+2+1:284
「正解だ。見てご覧、この素晴らしい一続きの数字の連なりを。220の約数の和は284。284の約数の和は220。友愛数だ。・・・(中略)・・・神の計らいを受けた絆で結ばれ合った数字なんだ。美しいと思わないかい?君の誕生日と、僕の手首に刻まれた数字が、これほど見事なチェーンでつながり合っているなんて」
僕は数学が苦手で大嫌い(高校時代に200点満点で17点取りました)。でも、こんなふうに数学の様々な不思議や神秘を学んでいたら、好きになっていたかも・・・。
さて、この「博士の愛した数式」。映画化の効果もあって、文庫版は100万部を超えるベストセラーになったそうですね。
映画は見ていないので、どうだか分かりませんが、この小説は確かに良いと思います。小川さんの作品に常に流れている「静謐(せいひつ)」な感じに加えて、ほのぼのとしたユーモアや暖かさが感じられる幸せな、そして少ししんみりする作品です。
↑ 純文学なんて退屈で難しい・・・と思っている人もぜひ読んでみて下さいね。
記憶が80分しかもたないと言えば、やはりクリストファー・ノーラン監督の「メメント」を思い出します。この場合は10分で、痛々しい映画したが・・・・。「博士の愛した数式」は「雨あがる」の小林堯史監督で寺尾聡と深津絵里なので優しいそして、安心して観れる映画になってるんではないでしょうか?
まだしばらく映画やっているみたいですね。
観に行ってみます。