2010年11月14日

映画『神の子どもたちはみな踊る』

 今年は村上春樹さんの小説を原作とする映画が2本も公開される稀有な年になりました。今日は、まずその1本め。短編小説集『神の子どもたちはみな踊る』の表題作です。


Story
ロス在住の中国系青年ケンゴは、まだ十分に若々しい美貌の母イヴリンと2人暮らし。再生者協会という新興宗教に情熱を注ぐイヴリンは、幼い頃からケンゴに「あなたは神の子だ」と言い聞かせてきた。ケンゴにはサンドラという恋人がいたが、イヴリンはケンゴを溺愛して離れない。ケンゴもまた母に変な欲望を抱かぬよう、マスターベーションと恋人とのセックスに溺れていた。ある日、酷い二日酔いで目覚めたケンゴは、2時間近く遅れて、再生者協会信者のグレンが営むアパート管理事務所に出勤する。そこにサンドラから電話が入り、ケンゴはグレンに嘘をついて彼女の下に行き、誘われるままにセックスをする。ケンゴのペニスは驚異的に大きかった。ケンゴはそれを、少年の頃、外野フライがうまく捕れるようお祈りしたのに叶えられず、代わりに神様が与えてくれたものだとシニカルに呟く。サンドラは結婚したいと口にする。実は棄教しているケンゴだが、いつものように「自分は神の子だから結婚はできない」と断り、サンドラは怒って部屋を飛び出して行ってしまう。ケンゴが事務所に戻ると、グレンは重い病気で死期が近いことを告白し、かつてイヴリンに邪念を抱いたことがあるのを今のうちにケンゴに謝罪しておきたいと語る。ケンゴを宿したまま命を絶とうとしたイヴリンを救い、神の道へ導いたのがグレンだった。グレンに頼まれた用事でケンゴが街に出たあと、サンドラがケンゴを訪ねてくる。ケンゴとの関係に悩むサンドラに、グレンはケンゴとイヴリンの特異な絆を語る。イヴリンは10代の頃、愛のないセックスで2度妊娠し、堕胎。その手術を担当した左耳の欠けた医者とも付き合い、3度目の妊娠をした。医者からは再び堕胎を勧められたが、イヴリンは医者と別れ、ケンゴを産む。常に厳格に避妊をしたにも関わらず、3度も妊娠した末に生まれたのだから、ケンゴは神の意志により生を受けた子なのだとイヴリンは信じている。用事を済ませたケンゴは街で偶然、左耳の欠けた男を見かける。どこまでもその男を追跡するが・・・。
(Movie Walkerより改変)


 原作を知らずに、上のstoryを読んだ方は、きっと「何だ、この話は?」と思うでしょうね(笑)。同じく、原作を知らずに映画を観た方も。

 映画の後、原作を再読しました。30ページぐらいなので、すぐ読めます。映画の骨子は原作と同じですが、上のstoryにも、映画にも、原作にある、何とも言いがたい微妙なニュアンスが感じられません。

 この作品を含め、原作の短編集に収められた小説には全て「阪神大震災」が遠景にあり、あの震災が人々にもたらした心の震えのようなものが描かれている(と思う)のですが、それがスッポリ抜け落ちているように思えます。一応、映画の中でも地震のエピソード(阪神大震災ではなく)はあるのですが・・・。

 舞台を日本ではなく、アメリカに置き換えてしまったことが、失敗のような。

 ところで、原作では「右耳の欠けた男」なのに、なぜ映画では「左耳の欠けた男」なんでしょう?


『神の子どもたちはみな踊る』公式サイト
http://www.kaminoko-movie.com/


 この映画でケンゴ(中国系なのに日本人名でコリアタウンに住んでいるわーい(嬉しい顔))の恋人サンドラを演じたソニア・キンスキーは、女優ナスターシャ・キンスキー(「テス」「パリ、テキサス」)の娘さんで、これが映画デビュー作。母親の面影、あります。
posted by ふくちゃん at 15:34| 兵庫 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Cinema Review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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