漫画を原作にした前作『ヒミズ』でも東日本大震災を取り入れて、脚本を全面的に書きなおした園監督でしたが、引き続き震災をモチーフにした映画を撮ると聞いて「意外に普通にマジメな人なんだなぁ・・・」と思ったものです。
Story
東日本大震災から数年後の長島県。酪農を営む小野泰彦(夏八木勲)は、認知症の妻・智恵子(大谷直子)、息子・洋一(村上淳)、その妻・いずみ(神楽坂恵)と、平凡ではあるが満ち足りた暮らしを営んでいた。隣に住む鈴木健(でんでん)と妻・めい子(筒井真理子)も、恋人・ヨーコ(梶原ひかり)と遊んでばかりいる息子・ミツル(清水優)に文句を言うことはあるが、仲良く生活していた。しかし、ある日、長島県に大地震が発生し、続いて原発事故が起きた。警戒区域に指定され、鈴木家は強制退避が命じられたが、道一本隔てた小野家は避難区域外だった。泰彦は、洋一夫婦を自主避難させるが、自らは住み慣れた家に留まった。その後、泰彦の家も避難区域となり、強制退避の起源が迫るが、泰彦は役所の説得にも泰然として家を出ようとはしない。避難所で暮らす鈴木家のミツルと恋人のヨーコは、瓦礫だらけの海沿いの街で、消息のつかめないヨーコの家族を探して歩き続けていた。果たして、原発に翻弄される人々に明るい未来は訪れるのか・・・。
(Movie Walkerより改変)
133分が、全く長く感じられませんでした。諧謔、狂気、人の優しさと愚かさがないまぜになった映画でした。
夏八木勲さん、大谷直子さんの演技が非常に素晴らしいです。演じているというより、そこにその人として本当に存在しているかのようでした。夫婦の絆、泰彦が息子夫婦や生まれ育った土地に寄せる愛情がとても美しい。夫婦の背景に映し出される夕景も美しい。
脚本・演出はリアリズムを基調としながらも、非リアリズム的表現が随所に配置され、効果を上げています。
映画の中で、多くの人々は福島県の原発災害を早々に忘れ去り、架空の町・長島県で再び起きた原発事故にも被災地以外では感覚が麻痺しているようです。それは被災地から離れて、普通に暮らし、こうして平和に映画を観ている、僕自身の姿にも重なります。
「愛があれば大丈夫」・・・最後にいずみが洋一に囁く言葉は、監督の本音なんでしょうか。それとも皮肉なんでしょうか。
公式サイトの監督インタビューによると、原発災害を描くというだけで(声高に原発や電力会社を告発するような作品でもないのに)資金調達には苦労されたようです。しかし、今後も震災や原発を題材に映画を撮るだろうとのこと。
堀部圭亮、伊勢谷友介、吹越満、大鶴義丹、田中哲司などの各氏がチョイ役で出演していたことがエンディングロールで明らかになりますが、堀部さんと吹越さんしか見つけられませんでした(吹越さんの顔は、暗闇ではっきり映っていませんが)。
『希望の国』公式サイト
http://www.kibounokuni.jp/