2007年07月30日

映画『夕凪の街 桜の国』

 シネリーブル梅田で『夕凪の街 桜の国』を観てまいりました。まだ公開2日目ということもあってか、大盛況。14:25の回を観ようと13:50に劇場に到着しましたが、整理券は90番。122席のシネマ1は立ち見も出る満席でしたが、その前の回も後の回も同様のようでした。

 原作は2004年に刊行され、第8回文化庁メディア芸術祭大賞(2004年)、第9回手塚治虫文化賞新生賞(2005年)をW受賞した、こうの史代さんの同名漫画。以前から読みたいと思いつつ、買いそびれていたのですが、今回劇場で購入。自宅に帰ってからすぐ読みました。


『夕凪の街』
原爆投下から13年、昭和33年の広島。疎開先の養子となった弟・旭(伊崎充則)と離れ、母・フジミ(藤村志保)と2人で暮らす平野皆実(麻生久美子)は、会社の同僚・打越(吉沢悠)から愛を告白される。だが、彼女は、原爆で父と妹を失い、自分が生き残ったことが深い心の傷になっていた。「どこかで、お前の住む世界はそっちじゃないという声がする・・・。うちは、この世におってもええんじゃろうか?」そんな彼女の想いを打越は優しく包み込むが、2人の思いが通じ合った矢先、皆実に原爆症の症状が現われ、彼女は少しずつ衰弱して行く・・・。

『桜の国』
平成19年の東京。定年退職した父・旭(堺正章)、弟・凪生(金井勇太)と暮らす七波(田中麗奈)。彼女は、最近の父親の挙動不審を心配していた。ある日、こっそり家を抜け出した旭を尾行していくと、なんと広島行きの夜行バスに。七波は偶然その場で再会した小学校時代の友人の利根東子(中越典子)にお金を借り、2人でこっそり同じバスに乗り込んで、旭の後を追う。広島での父の姿を遠目で追いながら、亡くなった祖母・フジミ(藤村志保)や母・京花(栗田麗)のことを思い出し、自分のルーツと向き合っていく七波。一方、被爆者を母親に持つ凪生との交際を両親に反対されている東子は、平和記念資料館で被爆の実相に触れようとする・・・。


 『夕凪の街』、『桜の国』のどちらにも戦争や原爆の生々しい映像はなく、声高に何かを叫ぶという作品でもありません。『紙屋悦子の青春』同様、静かで上品な反戦映画。

 特に『夕凪の街』は、描きようによっては「お涙頂戴」モノにもってこいですが、原作同様に全体に抑えた作りで、むしろささやかな明るささえ感じさせて、リアルに戦争や原爆を知らない世代 ― 僕ももちろんそうですが ― に伝わるんだろうか、とちょっと心配になるほどでした。しかし、それだけに皆実の最期の言葉が胸に迫ります。そして、『桜の国』の最後で、旭が七波にかける言葉も・・・。この言葉で、時代を隔てた2人の女性が確かに繋がる気がしました。戦争も原爆も単なる過去の話ではなく、10数年経っても、60年経っても、その時々の日常に繋がっていることも、改めて感じました。


 僕は大学生のとき、2回ほど広島に行き、資料館を見学しました。被爆者の方々の話を初めて直接聴いたときのショックは忘れられません。

 原爆投下から、まだたった60年しか経っていないのに、被爆された方もまだ生きておられて、被爆2世・3世の方もいるというのに、もう普通に戦争できる国になろうとするこの国。

 いつか、また広島に行かなくては・・・そんなことを頭の隅で考えながら、ずっと観ていました。

 ちなみに、原作は映画以上に良かったです。


『夕凪の街 桜の国』公式サイト
http://www.yunagi-sakura.jp/



posted by ふくちゃん at 01:03| 兵庫 ☁| Comment(16) | TrackBack(22) | Cinema Review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
観られたんですね!

決して押し付けがましくないのですが、ずしりと心に響きますよね。

原作、それ以上に良かったんですね。
早いところ読みたいと思います。
Posted by めい at 2007年07月30日 05:13
>めいさん。
2007年07月30日05:13って・・・。
早起きですか、夜更かしですか(^^)?
原作良かったですよ。特に『夕凪の街』のラストは、漫画ならではで。
Posted by ふくちゃん at 2007年07月30日 23:56
この漫画、最近人に薦められて読んだところで、すごく良かったので記事にしようと思っていたところです。
大げさに表現するわけでもなく、どこか飄々としていて、漫画だからこそ描けるような世界に圧倒されました。いや、あれが現実に起こったんですよね、、、。
映画も観てみたいです。
Posted by mirai-creek at 2007年07月31日 00:19
>mirai-creekさん。
もっとひどい話、辛い話もいっぱいあったんでしょうね。
忘れてはいけないことだと思います。
Posted by ふくちゃん at 2007年07月31日 22:53
去年読みました。
素朴な絵柄が印象的な作品でした。

戦争漫画はたくさん出版されてます、どれを読んでも胸が痛みますね。


沖縄の女学生の話をテレビでやってましたが涙が止まりませんでした、この国が先の戦争で起こした全てを国民がしっかり学ぶ必要があると思います。
Posted by カフカ☆ at 2007年08月01日 06:25
>カフカ☆さん。
被害者にも加害者にもなりたくないですね。
Posted by ふくちゃん at 2007年08月01日 22:51
私、戦争の生々しい映像が苦手で、戦争映画は、あまり見に行っていません。。。
ただ、我が家は、祖父母と暮らしているので、幼い頃から戦争の話は、よく聞いていました(V V)
Posted by yukarin at 2007年08月02日 00:34
>yukarinさん。
この映画は生々しい映像はなく、爽やかですらあります。きっとyukarinさんのお眼鏡にも適うのでは・・・。
Posted by ふくちゃん at 2007年08月02日 22:05
ブログタイトルが心に残り(笑)
とあるところから 飛んできました♪

私は 映画を観てから原作を(実は昨日!)
読んで
原作でも ポロポロと泣けてしまいました。
原作は もちろん素晴らしいです
けど 映画も 良かったと思います。
どうして 旭が 堺さんんいなっちゃったんだろう??と 疑問だったのですが
漫画のイメージは 確かにあんな風貌でしたね。
原作の皆実の方が
明るかったですね・・
(ゆえに そのほうが 心に来るかも?)
とにかく 原作・漫画とも
人にすすめまくっています。
TBさせて頂きます。宜しくお願い致します。
Posted by はじめまして at 2007年08月07日 09:28
>はじめまして(猫)さん。
そうですか・・・タイトルに惹かれて(?)来ていただいたんですね。
すっかり有名無実化したタイトルですけど^^;。
麻生さんはTVに滅多に出ないで、ずっと映画中心で活躍されている、イマドキ数少ない「映画女優」さんですね。
原作とは少し違うイメージですが、良かったです。
Posted by ふくちゃん at 2007年08月08日 23:28
こんにちは♪
こちらからのTBが不調ですみません。
そうですか、原作は映画よりも良かったんですね?
たとえば「桜の国」の七波の父親(マチャアキ)の行動などはマンガであればクスッと笑って済ませられそうな感じですけど、映像にするとちょっと腑に落ちなかったりしました。
久しぶりの広島への墓参りをきっかけに自分の姉や母たちのことを自ら七波や凪夫に伝えて欲しいな〜と思いました。
「静かで上品な反戦映画」は却って胸に響きますね。
Posted by ミチ at 2007年08月13日 15:53
>ミチさん。
そうですね。
なぜ、旭が七波に黙っていきなり広島へ行ったのか。
漫画での説明も、論理的には決して納得できるものではありませんが、ま、いいか・・・って思えました。
いずれにせよ、旭はこれかた過去のことをちゃんと七波に説明するような気がします。
Posted by ふくちゃん at 2007年08月16日 00:15
 こんばんは♪
 TBどうもありがとうございました。

 映画→原作の流れ、おんなじです。
 映画もとてもよかったですが(とくに皆実!)、原作はものすごくよかったです。
 
 広島、2回行かれてるんですね。
 私もまた行ってみたいと思いました。
Posted by miyukichi at 2007年08月20日 20:13
> miyukichiさん。
皆さん、映画に関しては『夕凪の街』の方が評価が高いですね。
僕もそう思います(笑)。
Posted by ふくちゃん at 2007年08月20日 23:45
すみませんっ!TB間違ってしまいました。
『あさのあつこ』のほうを削除してください。
よろしくお願いします。

この映画、観客層が幅広かったですね。
顔がパリパリになりました...。
Posted by あん at 2007年08月23日 09:39
>あんさん。
削除了解しました(笑)。
この映画、確かに老若男女、いろんな方がお見えでした。
良いことです(^^)。
できるだけ多くの方に観てもらいたい映画です。
Posted by ふくちゃん at 2007年08月23日 23:41
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